SCENE006



「やっと着いた」
「直に準備開始よ!」
飛空艇は、樹海障壁にたどり着いた。目的の地は、未子矢村から50キロとかなり離れた場所だ。
蹄国から隣国へ抜ける道が樹海を2つに分けている。道の両側が障壁によって守られているが、わざわざ樹海の一本道を通るバカはみんな無らしく荒れ放題、ちょっと目には道であることは分からないぐらいだ。
「多分、廃道ね。此処なら他人を巻き込む心配も無しと」
「例え巻き込んだとしてもバレそーにない……」
「ミナミ」
「冗談だよ、冗談」
「ミナミが言うと冗談に聞こえない」
「そんな、ひどーい!」
「だって、ミナミの日頃の言動が過激だからさあ」
「別に過激じゃないわよ」
「過激です」
「そーじゃなくて、思ってることを正直に口にしちゃうだけなのよ」
「そーなの?」
「ほら、カレンみたいに裏表ある性格じゃないから、嘘がつけないのよ」
「なんだと」
「ちょっと、怖い顔で睨まないでよ」
「どーせ、あたしは裏表のある女よ」
「やーねカレン、冗談なんだからイジケないでよ。もーそろそろ結界を張らないと時間が……既にヤバイわね」
「えっ?ああっ!」
「なにも、そんなにビックリしなくても」
「どーすんのよミナミ!こーんなに時間が押してる!」
「カレンってば、まるであたしの所為みたいに言わないでよ!」
「とにかく急いで結界を張るわよ!」
「分かってる」
「ヨシアの逃げ道を作るのを忘れないで」
「でも、あいつ手筈どおりに逃げられるかな?」
「うーむ……難しいところね」
「ヨシアてば作戦の手筈、もう忘れてるんじゃない?」
「どーする?ビィごとふっ飛ばすわけにもいかないでしょう?」
「ヨシアの場合それでもいいんだけど、黒王が壊れるから」
「アレの修理費は高いもんね」
「そーなのよバカになんないのよ!」
またまた、そろばんを弾くミナミ。
「どうする?」
「じゃあ、奴を結界の完成と同時に外へ強制排除ってのはどう?」
「つまり、法術のプログラムにそのオプションを加えるのね」
「問題ある?」
「ない」
「決まりだね」
ミナミとカレンは、ニマッしてからやっと結界を造る作業に取り掛かった。

「ほぼ予定どおりだね」
「うん」
白虎は、障壁の天井ギリギリの位置をキープしながら、地上を突っ走る黒王と平行して飛行している。
「しっかりとビィも来てるし」
黒王に僅かに距離を置いてビィがピッタリと後を追う。
「ヨシアが、ちゃんと注意を引いてくれてるからね」
ゆっくりと回転するまだらの薄くて巨大な円盤は、時折、黒王の剣の攻撃を受けて、外れそうになる軌道を修正する。
「やっぱり、さっきのトキヤの攻撃が効いてるみたいね」
「ん?」
「飛空艇の精霊砲をあのビィの集合脳に向けさせたでしょう?」
知能的には、はるかに人間をしのぐ集合体の脳、集合脳。
「分かった?」
「あたりまえでしょう。あたしだって妖精のはしくれなんだから、印の流れぐらい読み取ってるわよ」
「流石だね」
「失った集合脳は、九割を越えるでしょう?」
「正確には九八.五%」
「なるほど。それでも自己崩壊しなかったのね」
「なんたって集合数1000だからね。残りの1.5%でも全体を制御出来るらしい」
「たまんない化け物ね」
「それに、すごい再生力だよ。目的地までいまの状態が維持できるかどうか、ちょっと怪しいもの」
「また、壊せばいいんじゃない?」
「残念ながら、奴は新しい集合脳を並列型に分割再生させてるみたいだ。実物は初めてだけど、本では読んだことがあるよ」
「えっ、どれどれ」
モナモナはモニターを覗き込んだ。眼下のビィの集合体は、単体の集合脳を造るのではなく、処理を並列化する複数の集合脳を再生させていた。
今度の集合脳を始末するには、それこそ集合体の内部までコンガリと焼く必要が有る。
「分割とバックアップか。敵もやるわね」
「あれだけの規模の集合脳だからね。同じ手は2度と通用しそーにない」
「同じ手が通用するのは、この辺りじゃヨシアぐらいよ」
「でもさ、まだ法術を使わないだけマシだと思うけど」
「ビィの法術か。それも歴史上の記述だから、本当かどうかは分からないけど、用心はしておいた方がいいわね」
「集合数1000か。法術を使えるビィが混ざっている可能性は否定出来ないよね」
「そういうこと」
「やっぱり、勝負は集合脳の再生が鍵になるか」
「最初の攻撃で集合脳を吹き飛ばせた幸運を無駄にしないことね」
「つまり、ヨシアのおかげかな」
「違うと思うけど」
「ヨシアは勇気があるよ」
「無謀の間違いじゃない?」
モナモナは、最後のイチゴをかじった。

自己崩壊の危機を免れたビィの集合体は、ほとんど消滅しかかった集合脳を再生させながら飛行を続けていた。
思考回路の回復は成されていないが「人を狩る」というビィの本能が、目前の敵を追わせている。
それでも時折、考え込むように動きが鈍くなるのは、並列して再生される途中の集合脳のネットワークが、しきりに「危険」という信号をやり取りするからだ。
しかし、それも黒王の攻撃による閃光と痛みによって、優先順位を落とされ、目の前の「人を狩る」という本能からのコールにすり変わってしまう。
それは、ビィという存在そのものが「自己保存」よりも「人を狩る」という選択肢を重視するように造られていることと無関係では無いだろう。

「ちっ、雨か」
走り続ける黒王に大粒の水滴が落ち始めた。少しは、木々の葉がやわらげてくれるのだろうが、雷鳴が轟き、滝のような雨足となっては、その効果もみんな無となる。
「おい!」
水を含んでヌルヌルになった苔は、走る黒王にとって、非常に都合が悪い。更に大量の雨で「あっ」という間に出来た急流が足をすくう。
「どーにかならんかトキヤ!」
面倒なことはとりあえず天空に叫ぶ。分厚い雷雲が邪魔して、もう刻印を持ってしても白虎をモニター出来ない。
「ミナミとカレンの造りかけの結界の影響なんだよ」
「がまんせいヨシア」
「てめー、他人事だと思って!こっちは、壊れかかった関節を騙し騙し動かしているっつーに!」
「あれ?まだ具合悪いの?」
「んっ?」
「再生の法術を掛けていたんだけど」
「んっ、言われてみれば、さっきよりも調子がよくなったよーな」
土砂降りの中で、最悪の足場を転倒もせずに飛び跳ねていられるのがその証拠だ。
「ヨシアが相手じゃ、整備する気も薄れるよねトキヤ」
「そーは言ってもなモナモナ、本当にさっきまでは調子が悪かったんだぞ。俺様の腕をもってしなければ……」
「再生の法術は、効果が現れるまで時間が掛るんだよ」
「そうなのか?」
「お前は、キャンプの法術の時間に何をしてたんだ」
「寝てたのかな」
「ヨシア、その先、水たまり」
「おっ」
黒王が、大きく跳躍して、手頃な枝にぶら下がった。いくら身軽といっても、大型の機動装甲では、直にミシっと音を立てて裂ける。
「ありゃ、結構深そうだな」
「どうする、回り道する?」
「それとも、泳ぐ?」
水たまりというよりは、即席の湖が広がっていた。水の中から木々が柱のように突き出ている。
「止せよ、俺はこのまま上を行く。彼女達に追い付かれちまうからな」
ヨシアは、幹を蹴って次の幹に飛び移り、それを繰り返す。
「風が出て来たな。これもあいつ等の法術の影響なのか」
既に暴風雨に近い様相を呈している。まだ、追い風だから動きやすくはあったが。
「そーだよ」
「モニターで前を確認して見なよ」
「んっ?」
正面に何か見えた。豪雨と木々の向こうにうねる巨大な灰色の柱が、天空と大地をつないでいる。
「なっ……」
ヤバイ大きさ、というより、始めて見る大きさの竜巻だ。巻き込まれたら、地平の彼方まで吹き飛ばされそーな……。
「おい、ひょっとして」
結界の影響で雨と風……まさか……ヨシアの脳裏に嫌な考えが浮かんだ。
「もしかして、あそこが終着か?」
「ご名答!」
モナモナの元気な声が天空より聞こえた。

雷雲が渦を巻き、強風が木々の葉をもいで奪い去る。竜巻の巻き上げる風に視界が白く濁っていた。
その竜巻の真っ只中に飛空艇はいた。烈風にいまにも分解しそうな音を立てている。
「えーい、結界の下ごしらえだけで、こんなに影響が出るなんて!」
「やっぱり、樹海障壁の威力は凄いわね」
「ちょっとカレン、落ち着いてないでしっかり操艇してよ!」
「ミナミ、あたし一人に面倒ごと押し付けよーとしてない」
「そんな余裕なんかなーい!」
「それもそうね」
ミナミとカレンは、造りかけの結界が産み出す大きな力にほんろうされていた。
「飛空艇をギリギリまで結界のフィールドっつーか、障壁の外に出すわよ」
「分かってるけど凄い力!引きずり込まれそうだよ」
「船首が数ミリでも出てればいい、このままじゃ飛空艇がバラバラになっちゃう!」
「その調整が難しいんだよね」
完全にフィールド外に出てしまうと、結界は未完成のまま途切れてしまう。
「それでも引っ張られるか」
ギリギリまで飛空艇を後退させ、結界のフィールドとの境界を兼ねる樹海障壁から、その大部分を出したのだが、竜巻の風は、障壁を越えて影響していた。
「また、竜巻に取り込まれたら、ただじゃ済まないものね」
「そーよ、飛空艇の修理費なんて考えたくもないわ」
「直ればマシよ、大破したら、現在の技術じゃ再生は絶望的よ」
「それもそうだったわね」
結界に使った印の僅かな残りで竜巻から飛空艇を守る2人。
飛空艇の鼻先だけを突っ込んで、結界の詰めの段階に移行する。
「あーもう、早く来いヨシア!」
「そうだ!早く来い!」
2人は汗だくになって飛空石に手をかざし刻印を結び続ける。ミナミは圧縮言語を操り、カレンは精霊たちに次々と印を構成するプログラムを渡す。
飛空石を介して2人の法術は、飛空艇を貫く刻印筒、青白く輝きながら回転する自動刻印によって加速し増加する。
その印数、秒間20億印に達しようとしていた。紛れも無く新記録達成なのだが、2人ともそんなことには気付いていない。
「でも、これならあの化け物だって、ひとたまりもないわね」
ミナミは流れる汗を拭うこともなく、次々と強力な印を結ぶ。
「ただ、うまく誘い込めたらでしょ?」
カレンも同じく日頃は、まず使うことのない強力な刻印を結び続ける。
「……あからさまに怪しいもんな」
「並みの思考力を持ってるビィなら、まず近寄らないわね」
竜巻の中心は勿論、その周囲の巨木も引き抜かれ天空へと運び去られていた。その外周は風に押し倒された木々が巨大なミステリーサークルを描き出す。素人でも一目見れば、紛れも無く強力な結界が作られようとしていることが分かる。
「樹海障壁の結界を流用するんだから、派手なのは仕方が無いよ」
「そんなことは最初から分かってるけどね」
「ほら、やっと見えた……」
緑の地平線のから、青銅色の物体が現れた。ゆっくりと回転しながらこちらに近づいてくるそれは、平たくったり半球になったりと空に浮かびながら変形しようとしているように見えた。雲間にイナヅマが走るたびにヌメった光沢を反射させる。
「後は、ヨシアとトキヤに任せるしかないわね」
「だね」
飛空艇の刻印筒は更に唸りをあげ、青白い光をスパークさせながら、限界に近い数の印を造り続けた。

「ここまで来れば、勝ったも同然だな」
黒王が木にしがみついて空を見上げる。そうしないと、風に吸い取られてしまいそうだった。
雨が当たらないのは、止んだ訳ではなく、ビィが空を覆っているせいだ。
強烈な風は、しがみついた巨木ごと機動装甲をズルズルと竜巻に引き寄せている。
張り掛けの結界は、もう目前に迫っていた。全ての音は、風の音にかき消されていた。
「早くついて来い!」
ヨシアは、また光の剣を撃ち込んだ。閃光がビィの表面を焦がすまで見守ってから幹を蹴った。
「どうした!早く来い!」
ビィに向かって叫ぶ。ビィの動きが鈍い。黒王は傘の範囲から外れ、横殴りの雨に洗われながら別の幹に取り付いた。
「どうしたんだろ、止まっちゃったよ」
雷雲の上から監視しているモナモナからの報告が入る。
「あともう少しだってのに!どーにかならんのかトキヤ!」
見えないとは分かっていても、天空を仰ぐヨシア。
「駄目だ、集合脳の再生が速すぎたんだ」
「雷がバンバン落ちてるもんね、あれが刺激になってるんだね」
雲の上から冷静な分析。
「コラっ!ヨシアお前がどーにかしろ!こっちは、そんなにもたないぞ!」
「そうそう」
風にあおられて、やや斜めに傾いだ飛空艇からも切羽詰まったミナミの声とこんなときでも落ち着いたカレンの声。
ビィは、落雷と強風を受けながら空中にホバリングした状態。知能を急激に取り戻しつつあることは、女達の瞳を見れば分かる。
「まずい!根を下ろすぞ!」
クラゲ状ビィから、だらりと垂れ下がっていただけの足が地面に向かって伸び始めた。
「確かにまずい」
根を張ってしまうと、せっかく集まった1000の集合数がバラけてしまう。
「ミナミ、風を強くして」
空からトキヤの声。
「そんなこれ以上は無理よ!」
「大丈夫、モナモナがサポートする」
「まかせて!」
モナモナの声とともに飛空艇の操艇が急に楽になった。身体が軽くなった感じ。印数が限界を越して跳ね上がったのが分かる。
「これならいいでしょう?」
モナモナの明るい声。
「凄い」
思わず呟くカレン。あの小さな身体のどこにこんなパワーがあるのかと不思議に思う。
「流石に人一倍、食べるだけはあるわね」
「変なところに感心していないで、さっさとトキヤに言われたとーりにして!」
「分かってる。カレン!飛空艇は任せる」
「うん」
ミナミは、指を複雑に組み合わせて、刻印をそこに描き出す。セフティーロックの解除である。
キーン!
飛空艇の刻印筒から甲高い金属音が響く。青白い光は、船全体へと広がり刻印が浮かび上がった。
「うわっ!」
悲鳴をあげたのはヨシア。黒王の身体が風に飛ばされる。慌てて近くの木に光の剣を突き立てるが、樹齢数百年のその木も強烈な風の流れに引抜かれてしまう。
「わあっ!俺まで結界に吸い込まれるぞぉ!」
空中に舞ったヨシアが叫ぶ。
「大丈夫」
トキヤが呟く。
「うわわっっっっ!」
ドップラー効果の掛った悲鳴の残響を残して黒王は、空中でもがきながら、稲妻も引きずり込む大竜巻にあっさりと飲み込まれてしまった。
竜巻は、結界のフィールドを越えて成長し続けてる為に、鼻先を残していた飛空艇もまた、その中に取り込まれ、外からは見えなくなってしまう。
「やった!ビィも吸い寄せられてる!」
モナモナがモニタを覗き込んで叫ぶ。
長い触手は、地面に触れる前に風に吹き流される。集合体は、さっきまでものともしていなかった風にあおられ、表面から構成するビィの個体をバラバラと吸い取られていた。
「また、変形するのか」
トキヤは、汗ばんだ手で2つの操縦桿を握り締める。
風に影響されやすい円盤から、長方形へと形を変化させるビィの集合体。そして、その空間から離脱を図ろうというのだろう。
「また戦艦型に移行するみたいね」
「どうだ間に合うか」
「いける、ビィは、変形するタイミングを誤ったみたい」
集合体の変形は、完全に遅れをとってしまったようだ。風にあがなえず尻が竜巻に接触し、まるで溶けてしまうかのように集合が崩れ始めた。
「やった、結界が捕まえた」
変形しても全長200メートルは優に越える超弩級の集合体も、秒間数十億単位の印の威力の前に自由を失ったのだった。
オオオオッッッッ!
ビィたちの叫びが、天空にいるトキヤの耳にも届く。
「奴が折れて分解してる」
竜巻に飲み込まれた集合体は、風の力でねじ曲げられ、バラけながらフィールド内で直立の形になった。
「ミナミ!カレン!」
トキヤの叫びに応えるように竜巻が光を帯びて雷雲を突き破った。
「準備はいいよ」
モナモナが、側面から法術の支援を続け、青白い光をスパークさせながら、竜巻が白虎にまで届く。
「トキヤ!」
ミナミとカレンの声がハモる。
「よし!」
白虎は、腕を広げたまま竜巻の中に降下する。トキヤもまた天井の障壁から力を引き出していた。白虎の背中から光の帯を引き、装甲も光る。
そして、それを中心として光の刻印が竜巻の外側を覆うように広がった。さながら、刻印の巨大な塔が天を突いたように見える。
「待ってトキヤ!人がいる!」
突然、モナモナが叫んだ。
「えっ!」
しかし、既に白虎は雲を突き抜け、無秩序に固まったビィ達が結界に囚われているのが、肉眼ではっきり確認出来る距離まで、降下していた。
「間に合わない!モナモナ!頼む!」
「分かった、やってみる!」
トキヤは、白虎の腕を動かし、印のセフティーロックを外す。
ビィ達が一斉に白虎を凝視した。

ドン!

樹海に衝撃波が突き抜ける。
雨が一瞬にして霧となる。
そして、竜巻の代わって天空に伸びる円柱状の光のが目映く輝やていた。

2度目の衝撃波では、事前にパイロットが警告した為、またユカリがビンゴの腕の中に飛び込むようなことは無かった。
「さっきの衝撃波から6時間ちょっとというところか」
ビンゴは時計を見た。
「50キロ先に光りが確認出来ます」
「どれ」
パイロットから双眼鏡を借りた。白い光が天を突いてる。
「浄化の光か、勝ったらしいな」
「トキヤさん達、ご無事でしょうか?」
「心配ないだろう」
ユカリに双眼鏡を渡した。
「キミのジイさんに連絡を入れておいてくれ、ビィのウロコの上物が手に入ったってね」
「もう、ですか?」
「なーに、あいつ等が手ぶらで帰って来る訳がないからな」
ビンゴは、樹海の彼方を見つめた。

さっきまでの豪雨も強風も雷雲も嘘のように消えてしまった。あるのは穏やかな風と天空へと伸びる光の柱だけ。
「成功……」
竜巻に巻き込まれたヨシアの黒王は、宙に浮かぶ飛空艇の側面にしがみついていた。
「……だよな?」
ヨシアは、神々しく輝く白い光の眩しさに目を細めた。
「そーだと思うけど」
ミナミの疲れ切った声が聞こえる。
「光が消えてみないことには何とも言えないけど」
カレンは、いつもと変わらない感じ。
「しかし、俺は死ぬかと思ったぞ」
ヨシアは、結界の完成する直前に竜巻の中から飛空艇の上に落ちたのだった。地上に墜落するよりは、ずっとマシだけど。
「死ぬ訳ないでしょう」
「そーよ、あたし達が苦心して、法術をプログラムしたんだから」
「感謝されても文句を言われる筋合いでは無いわよ」
「飛空艇の上に落ちたのは偶然だけど」
「この辺りなら、何処に落ちたって木の上だから、死にはしないわよ」
「ホントに苦心して法術をプログラムしたのか?」
「男は細かいことを気にするな。わっはっはっ!」
「ミナミってば、胡麻化し方がヨシアと一緒だぞ」
「……」
「あっ、コラ、そんなところでフテ寝しないでよ」
「何をやってるんだ」
ヨシアは、黒王を飛空艇の上によじ登らせて一息付いた。
「ところでトキヤは、何処だ?」
「まだ、あの光の中よ」
結界のフィールドから、そのまま光の柱が伸びている。
結界の完成まで鼻先を突っ込んでいた飛空艇も、完成の瞬間に数キロも後方に飛ばされていた。
ちなみに黒王は、その途中で引っ掛けたのである。無論、半分は偶然である。
「よし、俺様が引っ張り出してやるか、待ってろよトキヤ、モナモナ、直に助けてやるぜ」
黒王が飛空艇から飛び降りようとする。
「待てコラ!」
「何だよ」
「駄目よ。あの中に入ったら、黒王なんてあっという間に蒸発しちゃうぞ」
「そうそう」
「そうそうって、それじゃトキヤは大丈夫なのか?」
「ヨシアじゃないんだから大丈夫に決まってるでしょう」
「それって説明になってないぞミナミ」
「なってると思うけど」
「カレンも付け加えるな」
「だから、トキヤの十八番の法術は熱関係なのは知ってるでしょう?」
「知らん」
「……」
「ヨシアのバカ、またミナミがフテ寝しちゃったじない!」
「俺様が何をしたって言うんだ」
「とにかく、光が消えるまで待ってろ!」
「はい」
思わず、飛空艇の上の黒王まで正座してしまう。
光は徐々に弱まり、数分後には、結界のフィールドだった白い円形の広場に白虎が立っている姿が見えた。




■SCENE007

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Mambo Nekoyanagi