SCENE017



未子矢村を出発して3日目の早朝。飛空艇は、昏也の自由市の上空に達した。
「駐機誘導灯からの誘導波を確認」
「応答波を発進」
「駐機する」
ミナミとカレンは管制塔と交信する。
「貧乏臭い機体ばかりね」
眼下の駐機場を眺めてため息を吐くラピュタ。
「あんただって、見た目は変わんないんじゃない」
ニマっと笑ったモナモナがラピュタの前でホバリングする。
「中身がぜんぜん違うの」
ラピュタはモナモナをムニっ鷲づかみにすると頭と足を持って引っ張る。
「きゃああああ!」
「駄目だよ、ラピュタ、モナモナがノビちゃうよ」
トキヤがオロオロする。
「少しノビたぐらいがいいんじゃないか」
ヨシヤは、そ知らぬ顔で管制塔に渡す書類に目を通していた。

自由市のレイアウトは、ほぼ共通する。
中心に管制塔を置き、それを取り巻くようにマーケットがあり、外周部に駐機場と武装商人の雇った傭兵の警備部隊がある。上空から見ると、礫砂漠に巨大な円になっていた。
ミナミとカレンの操艇で、指定の場所に飛空艇は着陸する。
「朝ご飯は、オカユにしよーね」
ノビなかったモナモナが、トキヤの頭に乗ってワクワクしている。
「ヨダレ垂らさないでよ」
「あーん、トッピングは何にしよーかな」
既に心あらず。
「これが自由市か、聞いてたとーりにぎやかなんだな。それに大きい」
メグミは、キョロキョロ。
2人は、着陸前からデッキで自由市の様子を眺めていた。
近隣諸国の物流の中継基地になっているから、早朝の今の時間が最も賑わっている。大型の飛空船が、行ったり来たりと、なかなか壮観な眺めであった。
「あっ、ビンゴとユカリさんだ」
降りて来る飛空艇を待っていてくれたのだろう。デッキに向かって手を振っている。指定された駐機スペースの隣にズングリとしたビンゴの船がいた。
「おはよう」
デッキから声を張り上げるトキヤ。
「よう、随分と早かったな」
ビンゴはもともと声がデカイ。
「循環液の濃度を上げたからね。速度も上がってるんだ」
「精霊機関のプロペラでも着けた方が安上がりなのにな」
「速度を上げるのが目的じゃないからね」
「それも、そうか」
飛空艇は、地上3メートルの位置で停止し、底部ハッチから階段を出した。荷物を抱えたままデッキまでジャンプなんて芸当は、普通の人間には無理だから。
「直に荷物を入れるぞ」
「どうぞ」
既に補給する物資のリストはビンゴに渡してあるので、駐機場に用意されていた。作業員の操るフォークリフトが荷物を持ち上げて動き始めた。
「みなさん、こちらへいらして下さい。朝食の用意しておきましたから」
ユカリが、飛空艇の隣に駐機してある第6ビンゴ丸を指差した。
「わーい」
一足早く、モナモナがトキヤの頭から離陸してユカリの胸に飛び込んだ。

ユカリの用意してくれた朝食のメニューは、モナモナのリクエストに応えたわけではないが、オカユであった。
「うーん、この焼豚のトッピングがなんとも」
「モナモナってば、ちょっと入れ過ぎじゃないの」
「そんな貧乏臭いこと言わなくたって、まだあるわよ」
「こっちのザーサイもいけるぞ」
「えっ、どれどれ」
「コラ、俺のドンブリから取るなよ」
「けち臭い奴が多くて困る」
「そーいうなら」
「あっ、あたしの焼豚!ガルルルルッ!」
「もう少し静かに食べられんのかお前等、まったく育ちが知れるぜ」
「ビンゴに育ちをどーこー言われたくないぞ」
「ビィのイチゴを初めて食べたとき、思いっきり泣いてたもんね」
「えっ、そうなんですか社長」
「10年も前の話だろ」
「まあまあ」
「あっカレン、おとなしいと思ったら、一人でカニを食べてる」
「えっ、別に隠してないよ」
「じゃあ、なぜテーブルの下に置いて有るんだ」
「ほら、だってテーブル上が、いっぱいだから仕方なく」
「えーい、あたしにもよこせ!」
「駄目っ!」
「ついに正体を現したわね、カレン」
「ちっ、バレちゃしょうがない」
「あっ、こんなに殻が」
「へへへへ」
「そんな奪い合わなくても、まだ沢山用意してありますから」
「ところで、トキヤ」
「なに?ビンゴ」
「伽国の情報、仕入れといたぞ」
「だそうだよ、メグミ」
「わあっ!そのシュウマイは、わたしのだぞ!えっ、何だって?」
「だから伽国の情報」
「ああっ、誰だ先に海苔に醤油を掛けてる奴は!」
「その話は食べ終わってからにしよう」
「……そうね」
2人は、もそもそと残りのオカユをかき込んだ。

「朝から、ちと食べ過ぎた」
「ホント」
「眠くなっちゃったな」
「さて、おやつは何を食べようかな」
「わたしはもういい」
みんなは、お茶をすする。
「それじゃ、ビンゴから伽国についての報告があります」
トキヤが司会を務める。
「おい、そんな大事なことは、もっと早く言えよ」
「ホント」
「ちゃんとしてよ、ビンゴ、あんた他に使えないんだし」
「てめえ等な……」
ワナワナと震えるビンゴ。
「まあ、文句は後ということで」
「仕方がねーな」
「拍手をどーぞ」
「おーっ!」
ぱちぱちぱち。
「まあまあ、それぐらいでいいぜ。そんじゃ俺が武装商人のルートで探った伽国の現状だが」
「うん」
メグミが緊張の眼差しで、ビンゴの顔を見つめる。
「伽国の政権は現在も王室が握っている」
「えっ?」
「生死不明の王と王女。メグミ王女の代わりにコンドエイ伯爵が摂政として、第2都市に王都を遷都している」
「やはり生きていた叔父は、コンドエイ伯爵か」
「らしいね」
「伯爵は、戒厳令を出し伽国議会を無期限停止。国外に避難した貴族を責務放棄で逮捕し、財産没収、その一族を処刑している」
「なんだって!」
「まあ、処罰は逃げ出した特権階級に限定されているから、むしろ国内では支持されている」
「随分、厳しいんだね」
「国を安定させる為には仕方の無い処置なのだろう」
「ああ、わたしもそうしたかも知れない」
「無理だよメグミには。やさしい王女様だからね」
モナモナが、メグミの肩にちょんと止まった。
「ありがとう」
「ところで、メグミの従兄弟は?確か留学中なんだよね」
「残念ながら、帰国の途中で亡くなられている。乗っていた飛空船が、空賊に襲われたらしい。だから残った王女の血族は、伯爵ただ一人だ」
「そうか」
「残念だったね」
「運が無かったのだ。どーしようもない」
「ユニオンの動向は?」
「実質的に伽国を国として維持しているのは、ユニオンだな。それも本部から飛空戦艦を2艦も出している。あんな睨みを効かされたら、隣国も侵攻出来まい」
「ふむ、やっぱり本部って実在したんだ」
「ホント」
「あんた等も疑り深いわね」
「だってねえ」
「見たことないからね」
「えっ、でも本部の騎士の人なら、導師様のところに来てたよ」
「そーなの」
「なんで知らないの?」
「興味無いからでしょう」
「それを言ったら身も蓋もない」
「メグミのことは、伽国側に伝えたの」
「そーいう約束だったよな。ユニオンと伽国王宮には伝えて有る。第2都市に来てくれとのことだ」
「第2都市。伽南か」
「そう、それだ」
「ボクたちがお供していることは」
「無論、伝えて有る」
「あたし等が、樹海に沈んだ王都に入ることは可能かな」
「こちらのメグミ王女が許可すれば、多少ユニオンがゴネたとしても、どーってことないだろ」
「それもそうだったね」
「伽国がメグミのモノなら、問題無しってやつだね」
「別にわたしのモノってわけじゃないぞ」
「わかってる。でも許可はお願いするわ」
「許可が無ければ、無いなりに突入しちゃうけどね」
「そうだな、俺達の邪魔する奴は、蹴散らすまでだ」
「許可はする。だから、手荒なことはしないでくれ」
「邪魔しなければ、噛みつかないないから安心して」
「それならいいけど」
「じゃあ、飛空艇の刻印輪の交換は、そのドンパチが終わってからだな」
「そーなるね」
「なるべく早めに切り上げてくれよ。工場はもう押さえてあるんだから」
「そんなに時間は掛らないと思う。ただ、あっ、いや、何でもない……」
トキヤは語尾を濁した。

「さーて、何を食べちゃおうかな」
モナモナが一行の先頭を切ってブラブラ左右に飛ぶ。
一行の残りは、トキヤとメグミだ。
他の三人は、それぞれ自分の用事があるらしい。
ラピュタに至っては、駐機している他の飛空船とおしゃべりをしている。
普通の人から見ると飛空船の前で独り言で盛り上がっているようで、ちょっと危ない感じになる。本人は、まったく気にしていないけど。
「あっ、お好み焼きだ」
モナモナが屋台を指差す。
「お好み焼き?」
メグミは、キョトンとする。
「食べればわかるよ」
トキヤはニコっとした。

「今日は、珍しいなカレン。何時もならトキヤの後を追い回しているんじゃないか」
「たまには、ヨシアと買い物もいいんじゃない」
2人は、自由市の賑わいの中を歩いている。金さえあれば、なんでも手に入る場所だ。
「どーせ、荷物持ちだろ」
「ご名答。でも、あたしとデートってのも悪くないでしょう」
「そーねえ」
「光栄ですぐらい言ってよ」
「ハイハイ」
ヨシアの腕に腕を絡めて、ぶら下がるようにして歩くカレン。ヨシアの背が高いので、バランス的にはちょうど良い。これがトキヤだと可愛い弟とお姉さんになる。
「他の連中はどーした?」
「トキヤとモナモナとメグミの一行は、食べ物屋さん巡り。ミナミは怪しげな法術グッズあさりってとこかな」
「相変わらずだな」
「そーいうヨシアだって、いつもは、武器屋に入り浸ってるじゃない」
「商売道具だからな」
「何時もは、トキヤ任せのくせに」
「あいつが、整備したほーがいいものは任せるさ。剣は自分で手入れする」
「実戦じゃ使わないけどね」
「当たり前だろ、ビィは普通の剣じゃ倒せないからな」
「はっきり趣味で集めていますって白状しろよ」
「いつか役に立つ日も来るさ」
「だと、いいけどね」
カレンは、ふと立ち止まってショーウインドウに映る自分とヨシアの腕を組んだ姿を見つめた。
「ねえ、ヨシアの彼女って、どんな人なの教えて」
「俺に彼女なんていないぜ」
「まーたまたオトボケ。あたしは見たことないけど、みんな言ってるじゃない。ヨシアが可愛い女の子に追いかけられてるって」
「だから何度も言ってるだろ、それは誤解だって」
「確かリコとか」
「そ、その名前を口にするな」
カレンの口を押さえて、キョロキョロと周囲を見回す。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!だからな」
「そんなに怖がってるところ見ると、なんかとんでもないコトをしたんじゃない?」
ニンマリしながらヨシヤの頬をツンツンする。
「俺は何もしてない!あいつが勝手に」
「もーちゃんと断らないからいけないのよ。何か期待させるよーなことを言って、一途な乙女心に火をつけたんでしょう」
「俺は、命を狙われてるんだぞ。乙女心もヘッタクレもない」
「命を狙われるよーな、スゴイことしちゃったわけ。きゃあ不潔」
ドスドスと肘打ちをする。
「そんなことするか!あいつが勝手に逆恨みして」
シュッ!
風を切る音にヨシアは、突如カレンの身体を抱き寄せた。
「な、なによヨシア、いきなりこんなところで!」
頬を赤く染めて声を震わせるカレン。
「見つかった」
「えっ」
「ほれ、毒針が飛んで来た」
ヨシアの人差し指と中指の間に長い針が収まっていた。
「毒針?えっ?えっ?なに、誰?」
「決まってるだろう、後ろから毒針を飛ばす卑怯な手を使うのは」
振り返ると、ヨシアは八百屋の店先に積んであるリンゴの山に向かって指先で毒針を投げた。
シュ!
針はキラっと光ってリンゴに吸い込まれる。
「……?」
カレンは目をコラす。
ドサッ!
リンゴの山が崩れた。
バサッ!
赤い実が四方に飛び散って白いマントを羽織った少女が飛び出した。
「ひっ」
八百屋の親父は、その場で腰を抜かす。
「ほっほっほっ、やっと見つけましたわ。ヨシア・ナギ、いざ、尋常に勝負」
少女はその傍らで剣を抜き、ヨシアを指し示した。
あっと言う間に、なんだなんだと、野次馬が遠巻きに3人を囲む。やはり、好奇心旺盛な武装商人の街である。
「あれが、ヨシアの彼女?可愛いけど、ちょっと変わってるわね」
「だから、違うって言ってるだろ」
ヤレヤレという感じで背負った2本の剣を抜いた。
「おまえも尋常に勝負したいなら、毒針なんか使うなよ」
「はて、何かの間違いじゃございませんこと。このリコ・シラスナがそんな卑怯な手を使う筈がございませんわ」
クルクルなもみあげのお姫様な髪型を風になびかせる。剣士の正装なのだが、金ぴかの装飾がやたらと眩しい。
「じゃあ、どーしてリンゴの中に隠れてたのよ」
厳しく突っ込むカレン。
「それは……通り掛りにちょっと」
口ごもってしまうリコ。
「あんた、リンゴの中に潜り込む趣味があるの?まるで毛虫ね」
「け、毛虫……この美しいあたくしを毛虫呼ばわりするとは、その罪、万死に値しますわよ」
「やーい毛虫、毛虫、毛虫!」
カレンの心理攻撃は続く。またの名を悪口とも言う。
「卑怯ですわヨシア・ナギ!」
「えっ、どのあたりが?」
「あたくしに勝てないと悟って、その変な女と2人掛りで攻撃する気ですわね!」
「なんか、お前に卑怯とか言われると、無性に腹が立つんだが」
「やーい、毛虫、毛虫、毛虫!」
カレンは、はやし立て続ける。当然、面白そうだから。
「ううっ、許しませんことよ。とうっ!」
リンゴの山からジャンプしたリコ・シラスナは一回転して、
「やーい、毛虫、毛虫、毛虫!」
と、連呼しているカレンの後ろに着地し、彼女の首筋に剣を突きつけた。
「ほっほっほっ、ヨシア・ナギ!このブスの命が惜しかったら、剣を捨てて、正々堂々このあたくしと勝負なさい」
「その前に、どのあたりが、正々堂々なのか聞かせてくれ」
「ゴチャゴチャ抜かすと、あなたの大切なこのブスの命はありませんことよ」
「……ブスだと」
カレンが激怒していることは、その目を見ればわかる。
「カレン、死なない程度にな」
一応、注意するヨシア。
「さあ、早く剣をお捨てなさい。このブスが死んじゃいますわよ、おっほっほっほっ!」
「うるさーい!」
ドドンッ!
カレンの身体から青い稲妻が走った。
「きゃああああああっ!」
ビリビリと痺れたリコは、その場にバタリと倒れた。少しコゲている。
「……法術を使うなんて、卑怯ですわ」
それだけ言い残して気を失った。
2人は、その間にそそくさと逃げ出した。

「さあ、次の店に行こうか」
モナモナは、羽根を元気にパタパタさせる。
「そうだね、あれ、メグミどうしたの?」
トキヤは座り込んでるメグミに声を掛ける。
「もう、食べられない……」
ちょっと涙目。

「なんか、やたらと食べ物関係のお店が休みになってるわね」
「モナモナの仕業だろ」
「そーか、朝からやたらと気合が入ってたもんね」
「あの妖精は、一緒にいて恥ずかしいぐらい食うからな。」
「言えてる。平気なのはトキヤぐらいだよね。あたしなんか野次馬に囲まれて、顔から火の出る思いを何度したことか」
「それぐらいニコニコで、やり過ごせないよーでは、モナモナの弟子は勤まらんさ」
「あたしには無理だわ」
リコ・シラスナのえげつない襲撃をかわしたカレンとヨシアは、大量の買い物(ほとんどカレンの)をして、大荷物を抱えて(ほとんどヨシア)いた。
「あたし達も、飛空艇に戻る前にお茶していきましょう」
「大丈夫か?のんびりしてると、また、あの女が襲って来るぞ」
ヨシアは、またキョロキョロする。
「心配しなくたっていいわよ。あの女は、さっき自警団の人が担架に乗せられて運ばれて行ったじゃない」
「しかし」
「少なくとも、今日一日は動けないって」
「そうか、それならいいが」
「いよー、お2人さん」
後ろからの声に一瞬、ギクっとして立ち止まる。
「なんだミナミか」
「びっくりさせないでよ」
リコではなく、ミナミであった。
「おや、あちきに見られると困るよーなことでもしてたんですかい」
ミナミは、大きな風呂敷包みを背負っていた。きっと怪しげな法術グッズが詰まっているのだろう。風呂敷のガラも目が一杯描いてあって気持ち悪い。
「そーいうわけじゃなくてねえ」
「なあ」
「あらま、仲がおよろしいこと。それじゃ邪魔者は退散しますかい」
「ミナミは、お茶しないの?」
「する」

近くの甘味処で、特大パフェを3つ注文するあたりは、あまり人のことは言えない。
「ふーん、ヨシアの彼女が追い駆けて来たの。もてる男は辛いわね」
「まーな」
「でも、どーしてあの女に命を狙われてるの?あの女だったら、特に理由が無くても納得しちゃうけど」
「そんなにスゴイ娘なの」
「あのアブナさは、ヨシアにお似合いかもしれないけどね」
「えっ、そんなにスゴイの」
「お前等な」
「冗談だよ。だけどさ、どーしてなの?」
「なんでも家訓らしい」
「家訓?」
「皇の法剣士になる為のトーナメントで、あいつと対戦したのが運の尽き」
「それと家訓の何が関係あるの」
「まさか、対戦した相手は全員殺すとか物騒な家訓があるとか」
「似たようなもんだな」
「えっ、そーなの」
「よくまあ、捕まらないわね」
「いや、奴のシラスナ家の家訓てのは、不敗、つまり負けを認めないんだ。一度負けた相手をとことん追い詰めて抹殺し、最初から負けなかったことにする」
「そんな無茶苦茶な」
「俺もそー思うんだが」
「結果として、皇クラスの称号を得たのはヨシアなんだから、あのリコには勝ったわけね」
「それで、ずーっと追われていたんだ」
「そーいうことだ」
「まあ、なかなか情熱的な彼女が出来て良かったじゃない」
「他人事だと思って気楽なことを言ってくれるよミナミは」
「あら、あたしだったら、そーいううっとおしい奴は、さっさと息の根を止めちゃうわよ」
「いくらなんでも、そこまではな」
「なんだかんだ言っても、追いかけられるのが好きだったりしてね」
「止してくれ」
「ねーでも、あたしも勝っちゃったよ。もしかしてあたしも追われちゃうのかな」
「いや、その心配は無いだろう。シラスナ家のこだわりは、剣技だから」
「なら安心だ」
「なんでもシラスナ流剣術は、2千年間不敗だそーだからな」
「怪しいわね」
「あれだけ卑怯な技を駆使すれば、普通は負けないだろ」
「それもそーか」
「えっ、そんなに卑怯なの」
「あそこまで、徹底していると、もー感心するしかないわね」
「ありゃ剣術っていうより、卑怯術だな」
「言えてる」
「なにそれ」
3人は、カラカラと笑った。

その頃、病院のベットに包帯グルグルで寝かされているミイラ。もといリコ・シラスナ。目蓋がピッと開く。
「おのれ、ヨシア・ナギめ」
ヨロヨロと身体を起こし、剣の鞘を杖にして立ち上がる。
「その首、このあたくしが頂きましてよ。ほっほっほっほ……」
高笑いしたので、ジーンと痺れる。
「お、おのれ!」
腰を曲げて、杖を突きながら、リコ・シラスナは病室から逃亡した。当然、治療費は踏み倒しである。卑怯だから。




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Mambo Nekoyanagi